俄ファンには信じられないだろうが、我が国で88年の夏に公開された“LE GRAND BLUE”のインターナショナル英語版「グレート・ブルー」は驚くほどの記録的不入りだった。 しかし奇跡的にそれを劇場で体験できた人間は、熱狂的支持者となり、あの海の青に想いを馳せながらE・セラのサントラを聞き込む日々が続いた。 そして3時間近いロング・バージョンがあり、本国フランスではロングランを続けているとの情報にも、ほとんど絶望的な思いしか抱かなかった。そのバージョンをスクリーンで観る事は絶対出来ないだろうと。 だが、やがてそれは配給会社の努力と、マスコミのバックアップによって着実に進行し、遂に92年の夏に(ミニシアター系ながら)劇場公開が実現した……。となると今度は大ヒット。確かに宣伝の効果は大きかった。 しかし、はやりのお洒落な映画ぐらいにしか思っていない有象無象が列を成し、劇場は満員、立ち見になるわ並ばなきゃ入れないわでその熱狂ぶりは凄かったのだ。教えてもらわなければ良いものが判らない連中が多すぎる。 50分近く尺の伸びたこの版については今さら触れる事はない。解り易くなっているとか、無駄なシーン(明らかに日本の潜水チームの描写は必要ではない)が増えているとか、細部に関してはいくらでも言及できるが、バージョンの差異を説く事にあまり意味はないと思うゆえの事だ。 どっちが好きとか嫌いとかではなく、両方まとめて愛すればいいだけの事なのだ。だからこそ、ひとつだけ暴論を吐かせてもらおう。「グレート・ブルー」を劇場で観ていない人間に“LE GRAND BLUE”を語って欲しくはない、と。2010年8月、「デジタル・レストア・バージョン」にてリバイバル上映。