「酔っぱらった馬の時間」「亀も空を飛ぶ」のクルド人監督バフマン・ゴバディが、初めてイランの首都テヘランを舞台に撮り上げた青春ドラマ。 反イスラム的との理由で西洋文化の規制が厳しいイランで、それでも好きな音楽をやりたいと当局の目をかいくぐりながらアンダーグラウンドに活動を続ける若者たちのリアルな実像を、骨太な批判精神とユーモアとともに描き出していく。 前作「ハーフムーン」がイラン当局の検閲を受けたり、別の映画企画で撮影の許可が下りなかったことなどから、ゴバディ監督は本作では許可を得ることなく危険なゲリラ撮影を敢行、その後はイランを離れ、海外での生活を余儀なくされている。 また、出演者のほとんどは実在のミュージシャンたちで、主役の2人も撮影終了の4時間後にはイランを離れ、ロンドンで新たな音楽人生をスタートさせているとのこと。 インディ・ロックを愛するミュージシャンのカップル、ベガルとアシュカン。 しかしアシュカンは、無許可で演奏したとの理由で逮捕され、ようやく釈放されたばかり。2人はテヘランでの活動を諦め、海外への出国を決意する。そこで、違法なパスポートやビザを手配してもらうため、音楽のためなら何でも協力するという便利屋ナデルのもとを訪ねる。 ところが、2人の才能に惚れ込んだナデルは、出国前に当局の許可を取り付け、彼らの念願だったアルバム制作とコンサートを実現させてやると約束する。 そしてバンドメンバーを探すべく、様々な場所でアンダーグラウンドに活動を続けているミュージシャンたちを訪ねて廻るのだったが…。